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【文久三年(1863年) 3月】
「白雪!そこは背筋を伸ばせと言うたやろ!」
京一の色里…「島原」のとある娼妓屋では、
厳しさを孕んだ甲高い声が響いていた。
「音に合ってへん!…最初からやり直し。」
三味線の音が響き渡るその部屋で、
扇子を手に優雅に舞を舞う「少女」が一人…。
艶やかな黒髪を綺麗に結い、
色鮮やかな着物を身に纏うその美しい少女…「白雪」を、
目の前に座るこの娼妓屋の「女将」は、
射るような鋭い瞳で見つめていた。
「あかん!何度同じ事を言わせる気や!…そないな芸じゃあ、人前に見せられへんわ!」
女将の遠慮ない厳しい言葉に挫ける事なく、
白雪は必死に身体を動かす。
…しかし次の瞬間…
彼女は足を縺れさせてしまい、
その場に倒れてしまった。
ドサッ…
「いたっ…!」
それを見た女将は深いため息をつく。
彼女は慌てて立ち上がろうとしたが…
「!…つっ…!」
どうやら、
足を捻ってしまったらしい。
それでも痛みを堪えて無理やり立ち上がろうとする白雪を、
女将は眉をしかめて見やると…
再び深いため息をついて、
三味線を弾いていた芸妓の女に向かって言った。
「今日はもうええわ。下がり。」
「!女将さん!私、まだっ……」
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