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「えっと、要するに、君達は僕のクルマの精霊のような物だと。」
「はい、そうです。」
「そうそう。」
僕の声に二人が各々の言葉で答える。
僕は立ち上がると窓から向かいの駐車場を見下ろす。
そこには僕の二台の愛車、グランブルーマイカのスバルレガシィツーリングワゴンGT-B Eチューンと、グラナダブラックパールのホンダシビックSiR-Sが止まっている。
「申し遅れました。
私がレガシィです。」
「そしてあたしがシビックだよっ!!」
二人の自己紹介には答えずに、僕は問い掛ける。
「なぁ、クルマはちゃんと駐車場にあるぞ?」
僕の言葉に、レガシィの方が答える。
「はい。私達はあくまでクルマの霊が具現化した物なので、クルマ本体はそのままで、私達だけが自由に動く事が出来ます。」
その言葉に僕がこう呟く。
「要するに、幽体離脱のようなものか。」
「その表現、気に入らないなー。」
シビックが不満気に頬を膨らます。
「そうか、よくわかった。」
そう言うと、僕は携帯を取り出した。
「ねぇ?どこにかけるの?」
シビックの質問に僕が答える。
「警察さ。家に勝手に上がり込んで意味不明な話をしている女が二人もいると通報するのさ。」
「「えぇ~!?」」
二人が慌てて飛び付いて来る。
二人の感触に一瞬、自分の中の何かが吹っ飛びそうになる。
「それはやめた方が。
私達は普通の人には見えませんし、もし万が一、私達が連れていかれたら、二台とも走れなくなりますよ。
それでも良いんですか?」
レガシィが説得するように言う。
その言葉に僕の中に迷いが生じる。
「ちきしょう!!
どうするかなー?」
そう言いながら頭を掻きむしると、後頭部のコブに指が当たった。
「ん?なんだ、このコブ?」
「あっ、そう言えば、昨日、パパを送って来てくれた人が、パパが酔っ払って階段から落ちたとか言ってたよ?」
シビックの言葉に、僕は立ち上がるとこう言った。
「そうか!!
階段から落ちたから、こんな幻が見えるようになったんだ!!
多分、もう一回階段から落ちれば、元に戻るんだ!!
よし!!ちょっと階段から落ちて来る!!」
「「早まっちゃ、ダメぇー!!」」
だが、二人に再び飛び付かれ、制止される結果に終わった。
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