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息切れをしながら教室に戻って来た俺を、宮野君が「何かあった?」と心配してくれたが。
「何も……ないよ」
俺は宮野君の顔を真っ直ぐ見られなかった。
もう、終わりにしよう。
賽銭一万円分は幸せになれたし。
俺が宮野君を好きなのは、きっとこれからも変わらない。
でも俺は、宮野君が幸せな方がいい。
本当に好きな人と幸せになってくれる方がいい。
「神田、帰ろうか」
放課後、帰り支度を終えた宮野君が俺の席まで誘いに来てくれた。
「あ、あの……今日は用事があって」
「用事?」
気まずさから顔を逸らすが、宮野君がじっと見ている気配は感じる。
「大事な用なの。だから、先に帰るね」
宮野君の返事も聞かずに、俺は自分のカバンを掴んで教室を飛び出した。
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