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僕の意見に押されてしまった有田君は、「しばらく様子を見るよ」とだけ告げてションボリしながら教室に戻って行った。
有田君、イケメンのクセに気弱なんだろうか。
いや、そうさせてるのはアルパカの呪いだ。
アルパカ、恐ろしい。
そうして僕は、成田さんにアルパカ刷り込み作戦を続行する事にした。
作戦と言ってもただ成田さんに話し掛けてアルパカの良さを語るだけなんだけど。
毎日のようにそうやって話し掛けているうちに、成田さんも徐々にアルパカを大好きになってくれたら……。
そう思っていた僕の思惑は見事に外れてしまった。
「葉風君、おはよう」
朝、教室に来た成田さんが手に大きなアルパカのぬいぐるみを抱いていた。
もしや成田さん、アルパカ好きになってくれたのかなんて期待したのに。
「おはよう、成田さん。そのぬいぐるみ……」
「葉風君、アルパカ好きなんだよね? これ、ウチのお兄ちゃんがゲーセンで取ってきたの。葉風君にあげようと思って」
そう言って成田さんが僕の方にアルパカのぬいぐるみをズイッと差し出す。
「あ、ありがとう? いや、貰えないよ」
「遠慮しなくていいって。それに私、アルパカ苦手だから」
テヘッと照れ笑いをしながらの成田さんの言葉に、僕はアルパカを受け取る手を止めて固まった。
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