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「アルパカ……キライなの?」
「その……小さい頃に動物園に行った時に、アルパカにツバを吐きかけられてね。それからアルパカはキャラクター物でも苦手なの。葉風君が楽しそうにアルパカを語ってるから、なかなか言い出せなくて……」
僕の手にアルパカのぬいぐるみを抱かせ「そのお詫びでもあるの。受け取って」と、成田さんがニッコリ笑って。
「出来れば……私の前でアルパカの話は避けてもらえると嬉しいかな。ごめんね?」
ペコリと頭を下げられ、僕は作戦失敗を痛感して呆然としていた。
どうしよう、有田君の為に成田さんにアルパカを好きになってもらいたかっただけなのに。
有田君に何て報告したらいいんだ。
オロオロしながらアルパカのぬいぐるみをギュッと抱き締める。
どうしよう、どうしよう。
そればかりが頭を占めて解決策なんて浮かばない。
ふと顔を上げると教室のドアの陰に有田君が立っていて。
「有田君……」
僕が名前を呼ぶと有田君はクルリと後ろを向いて走って行ってしまった。
もしかして今の話を聞かれてた?
「有田君!」
僕の所為だ、僕が有田君を傷付けたんだ。
罪悪感を感じた僕は、ぬいぐるみを机に置きすぐに有田君の後を追った。
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