ご利益有ります。

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自宅とは違う方向、お参りをした神社に向かって走る。 境内に着いた時には息も苦しかったし首に巻いたマフラーも解けていたけど。 カバンから財布を取り出し、中身を確認。 千円札一枚と、小銭が少し。 それを全部賽銭箱に入れて、柏手を打って両手を合わせる。 「神様、前の願い事は無かった事にしてください」 千円とちょっとじゃ無かった事にはならないかもしれない。 それでも、お願いします。 「願い事を叶えてもらって、嬉しかったです。でも、これじゃダメなんだ」 両手を合わせたまま、ギュッと目を瞑る。 「俺は、好きな人には笑っていて欲しいから」 瞑った目から涙が滲んで、頬を伝った。 宮野君には、笑っていて欲しい。 偽物の幸せじゃなくて、本物の幸せで。 「お願いします、神様。お願い……」 「神田?」 聞き覚えのある、俺の好きな人の声。 え? 宮野君? .
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