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冬休み。
たった一人で初詣に来たのは、家から少し離れた人気の無い寂れた神社。
ポチ袋から抜き取った一万円札を賽銭箱に入れ、柏手を打って両手を合わせる。
「どうか、宮野君が俺を好きになってくれますように」
神様、俺の願いを叶えてください。
ここの神社は元々ウチの曾ばあちゃんがよくお参りをしていて、曾ばあちゃんに連れられて俺も小さい頃に何度か一緒に来た事がある。
曾ばあちゃんが死んじゃってからは俺もあまり来なくなったけど。
前に来たのは高校受験前に合格祈願をしに来た時だから、一年くらい前かな。
でもこの神社で合格祈願をしたお陰で、受験当日は風邪を引いて意識が朦朧としていたけど合格出来たんだ。
絶対にご利益はある。
「どうか、宮野君と仲良くなれますように」
念を押すようにもう一度願い事を口にすると、どこからか「叶えてしんぜよう」と微かに声が聞こえた……ような気がした。
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