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「榊英二さんで間違いないですか？」
若い刑事に訊かれた。
彼女の目の前には、青白い肌をし、動かなくなった夫の姿があった。
頬を触ると、氷のように冷たい。
「ええ」
「午前九時十五分頃、横断歩道を渡っている最中にトラックに轢かれ、まもなく死亡しました」
九時十五分頃。
彼女には思い当たる節があった。
「その時、信号は赤だったのですか？」
「はい。ただ、信号の色が変わった直後だったので気づかなかったのかと思われます」
こういう事件には慣れていないのか、刑事は顔を引き攣らせながら私を見る。
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