幻影

3/9
前へ
/11ページ
次へ
「夫はその時、何かしていましたか?」 「・・目撃者によると、携帯を見ていたそうです」 「夫はその携帯で何をしていたのですか?」 「それは・・」 悲しい顔をする刑事。 それでも彼女は続ける。 「その携帯に表示されていたのは・・私からのメールですか?」 今にも泣き出しそうな顔で見つめられた刑事は、思わず目を逸らしてしまう。 そして、そのまま黙ってしまった。 「そうですか。こうなったのは、私のせいだったのですね・・」 何も言わないことが、彼女にとっては肯定と同じだった。 彼女はその場で泣き崩れる。 静かだった霊安室に彼女の泣き声だけが響き渡った。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加