幻影

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********** 「英二、出かけるわよ」 午後一時過ぎ。 今日は英二の仕事が休みなので、二人でショッピングに行くことになった。 この提案をしたのは彼女ではなく、英二だ。 「英二から誘われるなんて初めてだわ。 今日は良い日になりそう」 部屋の扉に鍵を掛け、階の中央にある階段へ向かう。 マンションのエレベーターは故障していて、暫く使えそうになかった。 階段を下りきり、玄関を出ると、そこに同じ階に住む主婦達が真剣な顔つきで喋っていた。 彼女は思わず顔を顰める。 彼女はこの主婦達があまり好きではなかった。 というのは、何度か話に入ったことはあったのだが、内容が夫や他の部屋の主婦の悪口ばかりで良い気分にはなれなかったのだ。 でも、嫌いだからといって挨拶しないわけにはいかない。
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