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「手の尽くしようがなかった…?人の命助けるのが医者じゃねぇのかよ!俺らに頭下げたらそれで終わりなのかよ!お前ら医者にとっちゃだいきは患者の一人かもしれない!だけど俺らからしたら、だいきを助けられるのはお前らしかいなかったんだよっ…お前らしかっ…」
涙が零れ落ちた。あの時助かっていたら。もう少し早く着いていたら。
「どうしてだいきを助けてくれなかったんだよぉっ…」
ゆうりにとってだいきは、なくてはならない存在だったのに。
「…っ…なんとか言えよっ…!」
「りょう」
強く強く握りしめていた拳を振ろうとした時、ゆとがそれを止めた。
「ゆうり、眠ったよ」
ふわりと微笑んだゆとは、胸ぐらをつかんでいた俺の手に触れ引っ張った。離れた俺の手から、男は力なくその場に崩れ落ちた。
「病室戻ろう?」
俺の涙を拭いぽんぽんと背中を撫でたゆとは男の前にしゃがんだ。
「今度ゆうりの前に現れたら…俺があなたを殴りますから…」
「ゆと…?」
「ふふっ、行こう?」
立ち上がったゆとは、俺の手を引いて病室に戻った。
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