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第1話 野狐(やこ)のシロ
お母さんが病気になったので、かわりにぼくが会社ではたらくことになりました。
「お前に苦労を掛けて、すまないねぇ。気をつけて働いてくるんだよ」
お母さんが心配したけど、ぼくは心配しないでと元気に答えました。
「だいじょうぶだよ、お母さん。お仕事がんばってくるね」
こうして、ぼくは見習いとして会社ではたらくことになったのです。
「今日から見習いとして働いてもらう事になったシロ君だ」
オニ課長が紹介してくれました。
オニといっても、すごく怖いのではなく、トラ柄のパンツにクチャクチャの髪に角が生えた鬼さんです。
「化け狐のお母さんがご病気だから、替りに働いてもらうので、皆よろしく頼む」
テング部長も紹介してくれました。
お母さんのことを言ってくれたので、ぼくはうれしかったです。
テングといっても、いい気になって自慢しているのではなく、鼻の長い赤い顔をした天狗さんです。
「とりあえず、小さいおじさんに指導してもらうことになるから、後で挨拶なさい」
オニ課長が教えてくれたので、ぼくは小さいおじさんの所に行きました。
鎮守の森の奥。
ここは、あやかし会社です。
アヤシイ会社ではなくて、『妖かし』『妖怪』のはたらく会社なのです。
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