第1話 野狐(やこ)のシロ

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人間をおどろかせたり、怖がらせたりするのが仕事の会社なのです。 すごく昔から、妖かしは人間をおどろかせてきました。 なぜ人間をおどろかすのかは、ぼくはまだきいていません。 でも、それがお仕事だとお母さんに教わりました。 ここで今日からぼくは、お母さんのかわりにがんばってはたらくことになりました。 「そうか、化け狐さんは病気かい。それで坊の名前はなんていうんだい?」 お茶わんに入っちゃいそうな、小さいおじさんがききました。 「はい。ぼくの名前は野狐(やこ)のシロです、よろしくお願いします!」 最初がかんじんなので、ぼくは元気に答えました。 「ほうかほうか。額の所が白いからシロかい。野狐という事は、んっ、尻尾が一つだから、まだ見習いだね?」 妖狐(ようこ)は長く生きていると、尻尾が増えて妖力が増すといいます。 天狐さんは千年生きて、尻尾が九つあるそうです。 あのテング部長も、昔は中国からきた天狐だとお母さんからききました。 「はい、お母さんは尻尾が二つですが、ぼくががんばって立派な化け狐になり、お母さんに楽をしてもらいます」 「ほうかほうか。いかんのう、年を取ると涙もろくなって」
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