第1話 野狐(やこ)のシロ

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「そうじゃのう。今どき髑髏なんて落ちていないご時世になっちまったわいな」 小さいおじさんが同情してくれ、また泣きそうになったので、ぼくはあわてて変化の術をしました。 〈ドロンッ〉 「あれま、それは一つ目小僧ではないか!?」 お母さんに教わった術はこれしかありませんでした。 「まぁ、それでもイケるかのう。案外ニューウェーブとしてウケるかもしれんわいな」 そう言って太鼓判をおしてくれたので、ぼくは早速はたらきに出ることになりました。 「それでは坊には、あっちの団地を担当してもらおうかのう」 小さいおじさんに指示され、ぼくは団地で人間をおどろかす仕事を開始しました。 夕方の団地を歩いていると、公園の砂場に子供がいるのが見えました。 近づくと、うつむいて泣いているようでした。 〈しくしく〉 ぼくはちょっと警戒しました。 なぜなら、妖かしのムジナも、こうやって人間をだますときいたからです。 〈しくしく〉 赤い野球帽をかぶり、男の子が泣いています。 顔を見ようと、おそるおそる近づくと、 「あっ、犬だ!」 男の子に見つかってしまいました。 あれっ、術をかけていないのに人間に見つかったから、ぼくは驚きました。 「犬じゃないよ、野狐のシロだよ」
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