38人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうじゃのう。今どき髑髏なんて落ちていないご時世になっちまったわいな」
小さいおじさんが同情してくれ、また泣きそうになったので、ぼくはあわてて変化の術をしました。
〈ドロンッ〉
「あれま、それは一つ目小僧ではないか!?」
お母さんに教わった術はこれしかありませんでした。
「まぁ、それでもイケるかのう。案外ニューウェーブとしてウケるかもしれんわいな」
そう言って太鼓判をおしてくれたので、ぼくは早速はたらきに出ることになりました。
「それでは坊には、あっちの団地を担当してもらおうかのう」
小さいおじさんに指示され、ぼくは団地で人間をおどろかす仕事を開始しました。
夕方の団地を歩いていると、公園の砂場に子供がいるのが見えました。
近づくと、うつむいて泣いているようでした。
〈しくしく〉
ぼくはちょっと警戒しました。
なぜなら、妖かしのムジナも、こうやって人間をだますときいたからです。
〈しくしく〉
赤い野球帽をかぶり、男の子が泣いています。
顔を見ようと、おそるおそる近づくと、
「あっ、犬だ!」
男の子に見つかってしまいました。
あれっ、術をかけていないのに人間に見つかったから、ぼくは驚きました。
「犬じゃないよ、野狐のシロだよ」
最初のコメントを投稿しよう!