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「あっ、犬がしゃべった!」
「犬じゃないよ、狐だよ」
「狐なの? 初めて見たよ。シロって名前なの?」
「そうだよ、君は?」
「僕はマサルだよ」
「どうして泣いていたの?」
「お母さんに怒られたから……」
なんだ、いけないことをして怒られるのは、ぼくも時々あるからしかたがないよね。
「狐さんは何をしているの?」
マサルがききました。
人間をおどろかす仕事とは言えなかったので、ぼくはごまかしました。
「人間の友だちをさがしていたのさ」
マサルがぼくを見ています。
よく見ると、マサルは転んだのか、あちこち傷がありました。
「じゃあ、僕の友だちになってよ」
マサルが泣き止みキラキラした顔で言ったので、ぼくはうれしくなり答えました。
「いいよ、友だちになろう! ぼくのことはシロと呼んでいいよ」
「僕はマサルと呼んで」
ぼくはうなずきました。
「じゃあシロ。もう暗くなるから、また明日ね」
マサルがサヨナラをして、団地の一階の部屋に行きました。
その部屋の窓から、女の人が外を見ていました。
マサルのお母さんだね。そう思い、僕もお母さんがいる家に帰りたくなりました。
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