第1話 野狐(やこ)のシロ

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「あっ、犬がしゃべった!」 「犬じゃないよ、狐だよ」 「狐なの? 初めて見たよ。シロって名前なの?」 「そうだよ、君は?」 「僕はマサルだよ」 「どうして泣いていたの?」 「お母さんに怒られたから……」 なんだ、いけないことをして怒られるのは、ぼくも時々あるからしかたがないよね。 「狐さんは何をしているの?」 マサルがききました。 人間をおどろかす仕事とは言えなかったので、ぼくはごまかしました。 「人間の友だちをさがしていたのさ」 マサルがぼくを見ています。 よく見ると、マサルは転んだのか、あちこち傷がありました。 「じゃあ、僕の友だちになってよ」 マサルが泣き止みキラキラした顔で言ったので、ぼくはうれしくなり答えました。 「いいよ、友だちになろう! ぼくのことはシロと呼んでいいよ」 「僕はマサルと呼んで」 ぼくはうなずきました。 「じゃあシロ。もう暗くなるから、また明日ね」 マサルがサヨナラをして、団地の一階の部屋に行きました。 その部屋の窓から、女の人が外を見ていました。 マサルのお母さんだね。そう思い、僕もお母さんがいる家に帰りたくなりました。
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