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幸福と不幸ほど、世に溢れた対極は無い。
人が何かを感じるには、比較となる対象が必要不可欠だ。不幸を知らなければ幸福も実感できない。
だから人は傷つくのだ。相手に優しくなる為に。
と、何かの歌で聞いた事がある。
……綺麗事と断じるのに、些かの躊躇も無い。
人間は学習する生き物だ。体験した事でしか行動は起こせない。
その身に不幸しか受ける事のできなかった人間には、誰かを幸福に導く事などできはしないだろう。
悲しくも、これが人間という存在を科学的に検証した結果であり、また理論を知りもしない人にとっても肯定せざるを得ない、純然たる事実なのだろう。
……故に、俺はきっと復讐者と成る。
人間はそれ一個が確立した存在だ。いくら統計を並べたところで意味は無い。
先の言葉は嘘偽り無い真実を述べたつもりだが、自分の保身概念が働いていないという保障は、残念ながら無い。
男に生まれた以上、何時か女を傷つける日が来るのは致し方ない事だが、それでもという懺悔の心が俺の心の中に在る。
これは、ただ誰かと愛情で結ばれたいと願った男の記録だ。
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