飛竜、走る走る!

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ブロロロロロロロ…… 排気ガスをまき散らしながら、脇を抜けて追い越していくトラックを横目に、額から滴る汗を拭う。 生憎と中学生の身分では、車や原付などといった上等な移動手段は無い。決まった線路を通る電車が、財力的にも精々か。 恵まれた人ならばハイテクな装備も叶うが、オレは悲しきかな普通のママチャリ。 何の変哲もない、ただのママチャリ。  ギィコ ギィコ ギィコ 汗を撒き散らしながら、炎天下を行く。 夏真っ盛りなサンサン太陽の下で全力疾走とくれば、車道をクーラー効かせて走るオッサンや、人の気も知らずに手を振るガキを恨めしくも思うもの。 その邪念を消さんと、オレは更に加速して無心を目指すのだ。 ミーンミンミン ワアァァァァァ うるさい夏の風物詩と、遠くの運動場から上がる声。 何かを気にしまいと目を逸らせば、今度は耳から余計な情報が流れ込んでくる。 セミも、小学生達も、どちらも頑張るには暑すぎやしないか? ……また雑念が増える。もう沢山だ。  ギィコ ギィコ ギィコ 聞こえるのは、感じるのは。 この年季の入った自転車の躍動だけでいい。
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