1人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
ブロロロロロロロ……
排気ガスをまき散らしながら、脇を抜けて追い越していくトラックを横目に、額から滴る汗を拭う。
生憎と中学生の身分では、車や原付などといった上等な移動手段は無い。決まった線路を通る電車が、財力的にも精々か。
恵まれた人ならばハイテクな装備も叶うが、オレは悲しきかな普通のママチャリ。
何の変哲もない、ただのママチャリ。
ギィコ ギィコ ギィコ
汗を撒き散らしながら、炎天下を行く。
夏真っ盛りなサンサン太陽の下で全力疾走とくれば、車道をクーラー効かせて走るオッサンや、人の気も知らずに手を振るガキを恨めしくも思うもの。
その邪念を消さんと、オレは更に加速して無心を目指すのだ。
ミーンミンミン ワアァァァァァ
うるさい夏の風物詩と、遠くの運動場から上がる声。
何かを気にしまいと目を逸らせば、今度は耳から余計な情報が流れ込んでくる。
セミも、小学生達も、どちらも頑張るには暑すぎやしないか?
……また雑念が増える。もう沢山だ。
ギィコ ギィコ ギィコ
聞こえるのは、感じるのは。
この年季の入った自転車の躍動だけでいい。
最初のコメントを投稿しよう!