~X~

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大窓から射し込む光に満ちた、無人に近い静けさの室内に、甘い吐息の声が響く。 「ッ……ぁ…」 口付けの狭間に零れる、熱を帯びた吐息の声。 本来、薄紅色の小さな唇は繰り返される口付けに艶やかな紅色へと彩られ、白磁器を思わせる雪白の肌に、薔薇の花弁ような羞恥の熱が浮かぶ柔らかな頬。 口付けの狭間に開かれる双眸からは、長い睫に縁取られた無垢な印象の白月の瞳。 華奢で小柄な身体に、癖一つ無く、腰まで流れるように美しい銀月の髪。 息を呑む程に美しく、咲き誇る寸前の、朝露を含ませた白薔薇の蕾のような、禁忌を誘う美貌の青年。 聖界の次代の主となる次期聖主。 †ロア・S・セイン† 現在は、聖界を支える3柱の内、【神殿】と呼ばれる組織を支配、管理する神殿筆頭、聖司官でもあるロアは、聖司官執務室にある長椅子のソファーに座る側近の膝の上に向かい合う姿で座らされ、何度も側近から繰り返される口付けを受けていた。 「ハッ………ア………もう…」 「ロア、」 「ん…」 「まだだ、」 「…あ………」 蜜の吐息と共に限界を告げるロアの声を遮り、再び重なる口付け。 肩より少し長めに伸ばされた、月夜の空を思わせる、深藍色の髪を睡蓮の紋様が刻まれた銀の細長い筒型の髪留めで、襟足の位置で一つに纏め、髪と同じ切れ長の瞳。 涼やかな印象の中に落ち着いた雰囲気を併せ持つ、細身でありながら鍛えられ引き締まった体躯の長身の青年。 次期聖主側近。 †クロア・K・キセア† ロアの側近であり、現在は聖司官でもあるロアを補佐する聖司補佐官の一人でもあるクロアから、ロアは膝の上に座る華奢な身体を抱き締められ、俯きかける面の顎を軽く捕らわれると、再び甘い口付けを与えられる。 午前と午後の狭間の休息の一時。 互いに役職を離れ、恋人同士となる二人きりの時間。 二人だけの聖司官執務室に満ちる蜜の誘惑。 「…ッん……ぁ……ハッ……」 漸く、口付けから解放されると、全身の力が抜け、クロアの胸元に倒れ込むロアの身体を、クロアは包み込むように抱き締める。 そして、ロアの耳許に唇を寄せると、 「愛してる」 「ん……」 低く、官能を注ぐ声で愛の言葉を囁かれ、口付けられていた時のように、震えた吐息がロアの唇から零れ落ちた。
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