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彼女の姿が近づく度…心臓が爆発しそうな勢いで鼓動を刻む。
つい先程見かけただけの女性に、こんな風になるなんて自分が可笑しくて堪らない。
「こんにちは。あのですねぇ…ここに一人純朴な少年が居るんですけど、こいつの話を聞いてくれませんか?」
公平が芝居がかった風に、僕の肩に手を乗せてわざとらしく微笑んだ。
他人事だと思って、とことん楽しむつもりなのだと思う。それでも、こんな風に声を掛けるなんて、僕には真似できない芸当だ。
彼女は読みかけの本を指で挟み込み、小首を傾げて僕を見る。そうして柔らかに通る声で呟いた。
「何かしら?お話って…」
抜けるように白い肌が…今にも陽射しに分散しそうでただ綺麗だと思った。
「あの…出来たら…無理なら良いんです。絵を描かせてもらえませんか?」
僕は裏返りそうな声を、かろうじて押し留めてそう告げた。
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