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サクラの指示通り進んだ片山は、無事紫条家の森の中に出た。森は黒い闇に包まれているが遠くに本館と西館の明かりが見える。
「まったく驚いたもんだ」
そう苦笑し片山は本館を目指し歩き出した。そして本館の手前で拓と合流することができた。
二人は無事を確かめあい、そして二人並んで本館に戻って行く。その間、片山は住宅地での一件とサクラが助けにきた件を聞いた。どちらの情報もすでにユージから聞かされているので拓に特に驚きはない。
「……驚かないのかい? 捜査官」
「いや、十分驚いていますけど」
「そのようには見えませんけどね」
「そんなことないですよ。それより、戻ったらお願いがあるんですが頼めますか?」
「何でしょう」
「住宅地の状況説明をお願いします。そして食事と交代で休憩を取る計画を立てて下さい」
拓は時計を見た。時間は午前1時47分だ。
サクラとの待ち合わせ時間が迫っている。サクラが片山と別れたのは、拓に会いにいくためだろう。状況が理解不能の領域に入ってきたことは拓もサクラも確信している。
だが片山は腑に落ちなかった。
「何か隠してますな…… 捜査官。それにサクラ君も。誤魔化さなくてもいいですよ、二人とも反応が全く同じ…… 元々捜査官とサクラ君は家族同然の関係でしょ? 何を隠してるんです?」
「まいったな…… さすが探偵ですね」
「認めるんですね? 話してもらえますかね」
「今はまだダメです」
「捜査官!」
片山は小さく叫ぶと拓の上着を掴んだ。
「アンタにどんな権利があるかしらんがね。俺は仲間を見殺しにして戻ってきた! 何を隠してるんだ!! 俺たちにだって知る権利はあるんだ! サタンの連中に弄ばれるのは気に食わんがアンタたちの手の平で踊らされるのも気に食わん! 納得できる話はしてもらえんのですかい!?」
片山はさらに強く拓に迫る。だがその片山に対し、拓はそっと片山の手を握り言った。
「俺もサクラも考えは一つ……できるだけ多くの人間を守る事です。そのことだけは信じて下さい」
「ガキじゃないんだ。そんな言葉だけじゃ納得できませんな」
「情報は教えます。今じゃなくて、もう少し事態に目処がついたら。だけど、これだけは覚悟してほしい」
そういうと拓は静かに片山の手を解いた。
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