第1章 アキラ視点 「Megami Bicycle」より

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その日は珍しく、日曜に彼女のリコちゃんと会うことができた。 俺は矢上明良(ヤガミアキラ)。 高校1年生でBMXという自転車競技をやっている、一応プロの選手だ。 そして3月には渡米して、競技の拠点をアメリカへうつそうとしている。 大切な彼女と一緒にいられるのもあとわずか。 普段、大会やイベントに出場することが多いから、デートできるのは貴重な時間だ。 とは言え高校生の身、お金をかけて遊べるわけでもなく、俺たちはぷらぷらと商店街を歩いていた。 そこは八百屋や米屋、食料品のお店が立ち並ぶ界隈だ。 俺は日本のこういう街並みが大好き。わくわくする。 料理をするわけでもないのに、無計画に店を覗いたり覗かなかったり。 そうして歩くうちに、一つの店の前に人が集まっているのに気がついた。 ……肉屋さんだ。 「この人だかり何だろうね」 「おいしいコロッケでも売ってるのかな?」 俺がなんとなく足を止めると、リコちゃんものんびりと答えた。
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