プロローグ

2/18
前へ
/29ページ
次へ
 桜の花が咲き誇るこの季節に、ここ私立桜峰(おうほう)高校では他の高校と同じように入学式が行われていた。  他と違うのはその生徒たちの個性豊かなこと。  中でも一際目を惹かれるのが、満開の桜を思わせるほど美しいピンクの髪をした少年だった。  その少年――結城春(ゆうきはる)は、座っていても分かるほど明らかに背が低く、かわいらしい顔立ちをしているため女に間違われるほどだ。しかしそんな外見とは裏腹に、滅法喧嘩が強いというのは地元では有名な話である。  春は壇上で話す教師の話を全く聞かずに、後ろの席に座る友人に話しかけた。 「式終わったら駅前にナンパしに行こうぜ」  にこにこと話す春の脳みそは、普段から女と喧嘩のことで支配されている。  対して話しかけられた友人――斎藤真(さいとうまこと)は、喧嘩については春と同様無駄に強いが、女には一切興味がない。 「一人で行ってこいよ」  端から見たら背が高くてイケメンの真はナンパするとき居るだけで良いステータスになるのだが、いつもこんな調子で乗り気にならない。結局は付き合ってくれるのがいつものパターンだが。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加