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「私のことを考えないで、過ごしてください。私はそうするから。そして……」
「待っていて」と彼女は思い切った声で言った。
「私が話しかけるまで、待っていてください」
彼女の世界から、僕は消されてしまう。彼女は僕をいないことにできる。僕がいない世界を組み立て直してどうなるのか、試そうとしている。
僕の中の彼女は消えない。消えるはずがない。だけど、だからこそ彼女の中から僕が消えるということは、無限に続く入れ子の構造にとらわれる僕を示していた。苦味をようやく舌の奥に感じた。
僕はただ待っていると答えた。答えてしまった。
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