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カップをみつめる。立ちのぼる香気が睫毛を濡らし、視界を曇らせる。目を閉じ……開けたとき、対面にはもう誰もいなかった。
最後のひとくちをすする。浮かんでいた蛋白の膜が口内にからまり息をとめた。置かれるコーヒーカップ。底には色付いた砂糖が砂利のように散っていた。空のカップから立ち上る湯気に包まれ、僕の姿がぼうっとくずれた。消えていく僕の姿。
耳元で何かがとろけていくような音が聞こえた。時が雪のように深々と積もっていった。
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