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やっぱり部屋から出られないんだ?なのにありがとう。
手を振れば、各部屋のドアから手だけ出てきて振ってくれた。
その光景が可笑しくて笑みが溢れる。
俺はこのクラスで楽しく過ごせてたんだな。
玄関に到着すれば、タクシーの前に安田先生が待っていて、私が付き添います、と俺と荷物をタクシーに押し込んで自分も乗り込んだ。
勝呂先生は安田先生に、お願いします、と手を振り。
タクシーは宿舎の敷地を出て病院へと走る。
街灯が無い山道の為、昼間と違い真っ暗で、途中にある筈の桜のトンネルが全然見えない。
何かを思い出しそうだったから、もう一度見たかったな、と残念に思いながら、遠くに見える街の灯りを見ている内に眠ってしまった様だ。
気が付けば病院の前に居た。
病院の中に入れば年配の看護師さんに連れられ、何だか上の階の広い個室に入れられ。
驚くままにベッドに寝かされる。
そして白衣の美女がやって来た。
「黎、また記憶喪失ですって?」
へ?
「えっと、また?って事は前にも記憶喪失になってるんですか?……で、貴女はどなたでしょうか?」
頭の中が疑問符ばかりになりながら尋ねれば、貴女の主治医よ、と答えられた。
「主治医?」
「でもって黎、貴女の従姉の瑞希(みずき)よ。黎は瑞希姉さんって呼んでくれてたわ。もっとも戸籍上は本当に姉なんだけどね」
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