君がいたはずの夏

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「そうか...」 俺の考えはいつも見透かされる。病室での何気ない会話。全力の喧嘩。体調が優れた時に行った水族館。 夏希との全ての思い出が今になってよみがえる。 『この勝負で勝ったら負けた方にひとつ命令できる』 『負けないよ?』 病室でおこなったトランプ。勝ったのは俺。 『おっしゃ!夏希よわいな』 『うるさい!』 ムキになりトランプを投げ捨てる夏希。 『問答無用、じゃあ命令っと思ったけど思いつかないからとっとくわ』 『言いだしっぺのくせに』 ばーか。そう付け加える。 あと何分だろう、一分か二分か。 今、目の前にいる夏希はただ笑っている。穏やかに。いつものように。 「じゃあ、時間だね」 そして、時はきた。
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