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敵の補填も尽きたらしく、もうレオ背後の入り口から特殊部隊気取りの連中が出てくることはない。
先ほどの青年はレオの下で真上を見るようにして、銃弾の餌食になった仲間を眺めていた。
金髪の女が歩み寄ってくる。
銃弾を放ったらしい黄金色のレボルバー式拳銃をジャージズボンの腰に収めながら。
その女の名は間違いなく、ヒューガ・エストラーダ。
着太りするジャージを身につけており、自慢の完璧なプロポーションが台無しだ。
そのくせファッションモデルのようにして歩を進め続け、レオの眼前でピタリと止まった。
鉄板と青年の上に立つレオを少しだけ見上げている。
「お前……なんで居んだよ……!?」
「こちらの台詞です。あなたが運び屋のボスだったんですね?」
「んなわけあるか!!」
「ならレオさんもメールを?」
「あ、あぁ……。内容は?」
「火曜の午前0時、一人で来るようにと。それと座標のような数字の羅列がありましたね」
嗚呼、不安に変わる。
手違いとしか思えない。
手違いでどちらにもメールを送ってしまったのだろう。
レオに送るはずのメールを取り消してこのジャージ女に送るつもりだったが、レオにもヒューガにもメールが届いてしまった。
だとすれば、手違いなのは確実にレオのほうだ。
なぜならこの女のほうがレオより速かったから。
以前言った「俺に席を譲れ」という言葉も、今はもはや意味を成さない。
なぜならこの女はここに来てしまったから。
最悪だ。
当の本人は心なしか眠たそうに目をこすっている。
「なぜ来る前に俺に確認しなかった!?」
「あっ、すみませんでした。午後11時32分に目が覚めたものでして」
「そのジャージって寝間着だったのか……ってんなことはいい! お前、これから自分がどうなるか分かってんのか!?」
「お腹が空いたので何か食べたいですね。脂っこいやつ」
「ふざけんな!! お前は運び屋になんだぞ!? これからテメェの人生がぶっ壊れんだよ!!」
「えっ、そうなんですか? じゃあ帰りたいです」
「チッ、食えねぇヤツだな。帰れ帰れ、俺からしたらそのほうが好都合だ」
『我々からしてみれば不都合であるぞ』
おっと……なんだ?
レオとヒューガが登場した扉から、またもや人間が登場する。
その人間はメガホンを手に声を上げる。
女の声だ。
それもヒューガではない女の声。
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