怖い女とウザい女

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《大義。大義であるぞ、貴様ら》 メガホンを手にしたその女と思わしき人間は、感情のこもっていない声を発しながら近づいてくる。 段々と姿がはっきりとしてきた。 この世界では珍しい女。 それはヒューガにも言えることだが、スレンダーなヒューガと比べると対照的とすら言えるほど小柄だ。 遠近法の問題ではなく、おそらく近くまできてもレオの胸ほどまでの背丈しかないだろう。 後ろ向きに被った黒い帽子は確かニホンのタイガースとかいう野球チームの野球帽。 後ろからはやたらと艶の良い黒髪が背中ほどまで伸びている。 顔の下半分はチェッカーフラッグ柄のマフラーで覆っており、顔立ちはよく分からない。 オーバーサイズの白いロングTシャツ。 ウォレットチェーンを提げたホットパンツ、囚人ボーダーのニーハイソックス、DCの白いスニーカー。 基本白、所々黒。 白人の血を引いているらしく、マフラーから覗いた顔半分とメガホンを持つ両手はやたらと白い。 声音は可愛らしいと思えるほど。 レオの真下にいる青年の「ボス…」という呟きに、レオとヒューガは目を丸くする。 「お前がボス!!??」 《うむ。我輩がボスであるぞ》 至近距離まで来て、チビ女は足を止める。 だがメガホンを離さない。 小柄なその女の口調は明朗とは言い難い。 むしろ少しボソボソとした口調だ。 メガホンで聞いてようやくちょうど良く聞こえるほど。 少し茶色味がかった大きな瞳がレオとヒューガを舐めるようにして交互に傾く。 《我輩はジェリー・ヴェルセッティー。いかにも貴様らにメールを送ったJVである。以後JVと呼ぶがいい』 「なんだよその喋り方は」 《構うな。……この日に貴様らを呼び出したのは他でもない。これから…》 「えっと、どちらの中学校に通われてるんですか?」 《あー!! 黙って聞け貴様らっ!!!!》 明朗でこそないものの、表情はヒューガよりも豊かだ。 それでいて小柄な身体と大袈裟な仕草から可愛らしさすら感じられる。 ……にわかにこのチビ女が組織のボスとは思えない。 レオのファーストインプレッションはそんなところだ。   image=509414423.jpg
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