さっきまで寝てた女

2/9
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
静かすぎる。 まもなく日付の変わるミラノ郊外の農道は静寂に包まれていた。 聞こえるのはゾンダのピストン音とギアの変わる乾いた音だけ。 見えるのは定期的に通り過ぎる、明るさの足りない街灯だけ。 その静寂は、高まっていたレオの感情を徐々に凍てつかせてゆく。 なぜだ。 俺はヤツらにスカウトされたのだ。 もう少し歓迎してくれたっていいんじゃないか。 まもなく着く。 レオの自宅から30分も離れていない。 ミラノ中心部から少し外れた農地のとある場所が目的地だ。 そこが何かは分からない。 ワイルドウイング……レオをスカウトした運び屋グループからのメールは謎に包まれている。 タイトル、『トランスポーター募集のご案内』。 本文……。 『Martedi 00:00 Si prega di venire da solo. 45,26,29.98 09,24,35.80』。 火曜の午前零時に一人で来る旨と、意味不明な数字の羅列。 この数字が座標を示していることは、ジジの直感がなければ分からなかった。 北緯45度26分29.98秒、東経09度24分35.80秒。 その座標にむかっているのだが、第一ジジの考察が当たっているのかも分からない。 高揚は徐々に不安に変わる。 行けど行けど道以外に何も見えない 。 着く、着いてしまう。 ……ここか。 ゾンダはその座標で足を止めた。 その座標と自分が重なった途端、右手に突然建造物が現れる。 その建造物とは、廃れた農場だった。  image=485100989.jpg
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!