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「ハロー、ジジ。今日はどんな髪型だ?」
《チョンマゲ、って言ったら笑うか?》
「ははっ、なんだそりゃ」
レオが最初にしたのはジジへの連絡。
レオは緊張から柄でもなく声が震えそうになってしまったが、ジジの声は比較的落ち着いた調子だった。
ガムを噛んでいるらしく、時折聞き心地の悪い効果音がスピーカーから漏れてくる。
《いまどこだ?》
「指定された座標の位置に来た。まだゾンダの中にいる」
《オーケー。何がある?》
「定かじゃねぇが、恐らく農場だろうな。空っぽの馬小屋と朽ちた倉庫が見える」
《あー、他には?》
「そうだな……薄汚(うすぎたね)ぇカイロ、小せぇボロ小屋ってとこだな。それほどデカい農場ってわけでもねぇ」
《なるほどな。レオ、そこが運び屋グループの本拠地とはほとほと思えないぜ》
「なら場所を間違えたか?」
《いや、あの数字が座標以外だとしたら、他に場所を示すヒントがない。示した場所がミラノ近郊ってのも気がかりだし、そこで間違いないはずなんだがな》
「だよな……どう思う?」
《おおかたそこで待ち合わせして本拠地まで一緒に向かうってことになるんだろうよ。レオ、俺が言ったヤツは持ってるよな?》
「ああ。バッチリだ」
レオは助手席に置いてあるスーツケースをチラリと見る。
ジジが確実に持って行けと指示した物であるが、仮にそうでなくともレオは自主的に持ってきたであろう物でもある。
《馬小屋と倉庫とカイロと小屋だったよな? ワイルドウイングとかっていうヤツらがお前を歓迎するとしたなら、恐らく倉庫だろ。これがお前との最後の電話になるかもな、レオ》
「縁起でもねぇこと言うなっての。次は大金が手に入ったと報告してやるよ」
《おう、その息だ。期待して待ってるぜ》
「任せな」
ピッ…
電話とゾンダのエンジンを同時に切る。
レオはスーツケースを持ちながら車を出、農場に入った。
農場特有の悪臭は時の経過とともに消えたらしいが、代わりに伸びきった植物の臭いが鼻を突く。
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