さっきまで寝てた女

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心臓が縮こまる。 完全に見せてしまった隙と金切る銃声。 何が起こったのかを、脳より先に身体が理解した。 だが、おかしい。 思わず声をあげてしまったはずだが、自分はもっとしゃがれた声を持っているはずだ。 断末魔が、自分の断末魔ではない。 痛くない。 どこも痛くない。 撃たれていない。 心臓は高鳴ったまま、今もドクドクと全身に血液を送っている。 撃たれたならその感覚すら掴めないはずなのに、掴めた。 撃たれていないからだ。 そして同時に、断末魔を上げたのは自分ではなかったことに気付く。 断末魔を上げたのは、横にいた死に損ない野郎だった。 その弾丸を放ったのは、自分でも死に損ない野郎でもない。 先程レオが入ってきた入り口に、銃を構えた人間が一人立っている。 落ち着きを取り戻したレオは、その人間に目を凝らした。 ヤツがきっとワイルドウイングの代表者だろう、と。 しかし。 その人間の髪には、見覚えがあった。 もう見たくもないとすら思っていた、純金色のウザ長い髪だった。 「……クソ女!!!!????」 「あっ、すみません。遅刻しました」   パァンッ!! 「午後11時の目覚ましをちゃんと」   パァンッ!! 「止めたつもりだったので」   パァンッ!! 「まぁ俗に言う」   パァンッ!! 「二度寝ってヤツですかね」 シルエットがそう言い終わった瞬間、バタバタと人の倒れる音が背後から聞こえた。 レオは振り返る。 唖然とした。 大の大人四人が積み将棋のように折り重なりながら倒れていたのだ。 しかもすべて弾痕は左胸にある。 全く気付かなかったがレオの服を掠めながら撃っていたらしく、ミリタリコートの所々が小さく焼けただれている。 「お久しぶりですね、レオさん。ハグくらいしてくれてもいいんじゃないですか?」 ……なんで上下ジャージなんだ?  
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