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途中で声をかけられ世界創生に失敗したからだろう。
少女は不服そうに彼を見た。
ずぶ濡れだったところを見ると、ずっと走ってきたのだろう。
傘も差さずに。
「俺もその世界に行きたい! こんな世界はもうイヤだ!! 」
悲鳴に近い少年の声。少女は眉間に皺を寄せる。
彼はまだ、幼く穢れてはいない。
だが、大人を信用できない少女にとって彼の存在は扱っていいか解らなかった。
答えない少女に少年は、膝をつき、地べたに頭をこすり付けた。
その行為は、キタナイ大人が幼い少女に向かって嫌なことを頼むときに使うもの、少女の眉間の皺は更に深くなる。
「頼む!! 俺はこの力のせいで、母さんを失った。父さんだって、酒に飲んだくれてご飯、作ってくれない。だから……!!!」
少年の言葉を遮り彼女は、言葉を発した。
「いいよ、その代り、あなたは私のトモダチ。だから、頭を上げて。あのオジサンたちみたいなことしないで」
早口の少女の言葉に少年はついていけず、ポカンとする。少年のポカンとした顔を見ると少女は吹き出しそうになった。
「名前は? 」
少女のペースになっているのにも気づかずに少年は嬉々として答える。
「竜牙! 俺、竜牙っていうんだよ! 君は? 」
少女は、一瞬、辛そうに顔を伏せる。名前には良い思い出などこれっぽちもない。
少女にとって名前とは単なるブランド名のようなものだと思っていた。だからだろう。よく呼ばれていた言葉をさらりと吐き出す。
「doll」
少年は首を傾げる。小学生に英語などわかるわけがないだろう。それでも、少女は、その言葉をいい意味で使われたのではないと知っていた。いや、本能的に知らされた。
「ごめん、気にしないで、私の名前は、アリス。よろしくね? 竜牙」
差し出された白い手。それはすぐ、雨によってずぶ濡れになる。
彼はなんとなく照れ臭さと嬉しさがまざり、表情を緩ませながら、少女の小さく柔らかい手を取った。
それが、少年と少女、いや、アリスと竜牙の最初の出会い。
そして、これが、全ての始まりであり、終りであった。
その後、二人は、手と手を取った瞬間に、異次元に飛ばされた。
それもそのはず。魔法は打消しではなく、ただ、単に発動が遅れただけなのだ。
少女はそれを知らずに焦り、戸惑った。
アリスの泣き顔を竜牙が見たのはこれが初めて。
その時、不思議な声がした。
飄々としたどこか不敵で強気な声。
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