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「あ~あ、世界創生なんていうメンドクサイ能力を使って。まぁ、面白そうだし、許してあげる! 」
後ろを振り向くと、二十代後半の青年がシニカルな笑みを浮かべ立っていた。
極彩な世界? いや、これは世界じゃない。まだ、異次元と異次元の狭間なのだろう。
その証拠に周りには、触れれば壊れてしまいそうな球体がいくつも浮いている。
「あなたはだれ?」
少女は、恐怖も焦燥も忘れ、不敵に笑い立っている青年を見る。
青年はステップを踏みながら彼女に答える。
「僕はカミサマ。君たちに力を与えた」
その言葉に少女は、激し、ありったけの力を籠めて彼に魔法をぶつける。
こんなふざけたやろうのせいで、私たちは差別を受けなければならなくなったのに。
こいつだけは……!!!
アリスは怒りのまま攻撃を続ける。竜牙も何が起こったかは把握していなかったがアリスのその悲しそうな顔を見ていると、だんだん、その青年が悪者に思えてきた。
「アリス! 離れろ!!」
竜牙は、創生で金の剣を創ると、それを彼に振るう。
彼は、呆れたような顔をすると、パチン、と指を鳴らし、竜牙の作った剣を消した。
突然、消えた剣に戸惑う竜牙を尻目に青年も攻撃を開始する。
「ウィンターソード」
彼の低い一言に反応するように、かまいたちのような真空が現れ竜牙に襲い掛かる。
だが、それを止めたのはアリスのバリア魔法。
そして、彼女はそれに「カウンター」の効果も付加させる。
「貴方だけは絶対に許さない。命に代えても殺す」
年端もいかない少女の憎しみは、青年に精神的なダメージを与える。
思わず、詠唱魔法を間違え、別の魔法を出してしまう。
アリスはいとも簡単にその魔法を避けると、今度は闇魔法と光魔法のミックスを繰り出す。
本来ならば、光と闇は対比するので、それの混合などは不可能なのだがアリスの力と感情にリンクし、禁断の扉は開かれた。
「クラウド・シャワー!!!」
闇色に染まる空。それから、そこに幾千の光の雨が異空間へと降り注ぐ。
青年は、それをもろに受け、顔をゆがめる。だが、それはかすり傷程度。
それでも、彼は戦意を消失していた。
(僕が彼らを攻撃することなどできない。彼らの怒りを甘受しなければすべて終わる)
そう悟り、彼は、膝をつき、少女を見上げる。
アリスはその魔法を使ったときに浮遊していたので、彼を見下ろす形となった。
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