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「あなたのせいで、あなたがこんな力を私たちに渡したから!!!!」
アリスの叫びにカミは顔を歪める。それが懺悔の証でも彼女には伝わらないだろう。
竜牙は、アリスの飛んでる姿に息を呑んでいた。
人が浮遊するなどありえない事態に加え、彼女の瞳からは涙が流れていたから。
「おばあちゃんが死んで生き帰してあげたら、気持ち悪い子、縁起の悪い子。挙句の果てに捨てられて。親戚のオジサンたちはずっと私を変な目で見るし。こんなのがあるから、こんなのが!!!」
慟哭に近いもの。青年は、年端もいかぬ少女の待遇に心を痛めた。だからだろう。彼女に言う。
「それじゃあ、君の願いを叶えよう。何がいい? すべて与える」
彼女はその言葉に考え込んだ後、彼女は短く答えた。
「私のいうことをずっと、聞いてくれる人。何があってもはいってしか答えない」
彼は、そんなことか。と呟くと、また、指を鳴らす。
その行動に竜牙は思わず身構える。何か消される……!!
だが、何も消えずにその代り、ふくよかな男が立っていた。
瞳は群青色。深い海のような澄み切った色ではない。
そして、服装はグレーの無地のスエット。
「彼の名前はまだない。君が決めてもいいよ? アリス」
冥い瞳でアリスを見る男。それはまるで、機械のようで。
「シン、貴方は誰よりも深く物事を知り、誰よりも深く私を愛して」
そこには小学生のか弱い女の子はいなかった。
そこには誰よりも愛をほしがる女がいた。
「シン? それはぼくのなまえ?」
柔らかで眠そうな声音に乗せられた言葉。それはまるで、子守唄を唄ってたのに途中で眠りそうになる親のような声。
「そう、それがあなたの名前。どんなことがあっても、病める時も、健やかな時も。私だけを愛して」
呆気にとられる竜牙。神は苦笑を顔に浮かべた。
・・・
彼女が大好きだった父親に似させてよかった。
普通の男だったら彼女は心を開かなかっただろう。
大人っぽい少女だと思っていたがそういうところはまだ子供だ。
「わかった。貴女のことはなんて呼べばいい?」
機械的な喋り方から段々、子供っぽさと大人っぽさが混ざった口調になってくる。
アリスは少し考えてからポツリと呟く。
「女王。私はこの世界の女王になるの」
その瞬間、もう一つの世界の女王が生まれた。
「じゃあ、俺は、アリスを守る騎士になる!」
あどけない竜牙の声。
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