第1章

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「あなたのせいで、あなたがこんな力を私たちに渡したから!!!!」 アリスの叫びにカミは顔を歪める。それが懺悔の証でも彼女には伝わらないだろう。 竜牙は、アリスの飛んでる姿に息を呑んでいた。 人が浮遊するなどありえない事態に加え、彼女の瞳からは涙が流れていたから。 「おばあちゃんが死んで生き帰してあげたら、気持ち悪い子、縁起の悪い子。挙句の果てに捨てられて。親戚のオジサンたちはずっと私を変な目で見るし。こんなのがあるから、こんなのが!!!」 慟哭に近いもの。青年は、年端もいかぬ少女の待遇に心を痛めた。だからだろう。彼女に言う。 「それじゃあ、君の願いを叶えよう。何がいい? すべて与える」 彼女はその言葉に考え込んだ後、彼女は短く答えた。 「私のいうことをずっと、聞いてくれる人。何があってもはいってしか答えない」 彼は、そんなことか。と呟くと、また、指を鳴らす。 その行動に竜牙は思わず身構える。何か消される……!! だが、何も消えずにその代り、ふくよかな男が立っていた。 瞳は群青色。深い海のような澄み切った色ではない。 そして、服装はグレーの無地のスエット。 「彼の名前はまだない。君が決めてもいいよ? アリス」 冥い瞳でアリスを見る男。それはまるで、機械のようで。 「シン、貴方は誰よりも深く物事を知り、誰よりも深く私を愛して」 そこには小学生のか弱い女の子はいなかった。 そこには誰よりも愛をほしがる女がいた。 「シン? それはぼくのなまえ?」 柔らかで眠そうな声音に乗せられた言葉。それはまるで、子守唄を唄ってたのに途中で眠りそうになる親のような声。 「そう、それがあなたの名前。どんなことがあっても、病める時も、健やかな時も。私だけを愛して」 呆気にとられる竜牙。神は苦笑を顔に浮かべた。       ・・・    彼女が大好きだった父親に似させてよかった。 普通の男だったら彼女は心を開かなかっただろう。 大人っぽい少女だと思っていたがそういうところはまだ子供だ。 「わかった。貴女のことはなんて呼べばいい?」 機械的な喋り方から段々、子供っぽさと大人っぽさが混ざった口調になってくる。 アリスは少し考えてからポツリと呟く。 「女王。私はこの世界の女王になるの」 その瞬間、もう一つの世界の女王が生まれた。 「じゃあ、俺は、アリスを守る騎士になる!」 あどけない竜牙の声。
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