5182人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
「それよりさ。片桐さんが気になること言ってたんだよね」
「なんて?」
「戸川君を恨んでたことがあるって」
「あーそれ、
多分だけど知ってるかも」
麻紀が教えてくれた。
「亀岡さんが戸川君に抱きついて泣いてたことがあったらしいよ。
深夜のオフィスで」
「深夜のオフィス…」
意味ありげで、ちょっとショックだ。
「ただ目撃情報によると、
亀岡さんがしがみついてるばかりで、戸川君は腕も回さず棒立ちのままだったって。
戸川君らしいよね、無駄に優しさ振りまかない所が」
「いったいどんな状況なんだか」
「それは分からないけど。
でもそれのことじゃないの?
片桐王子が言ってるのは。
まあ誤解だったって言うなら、
そうなんでしょ」
「余計気になってきた…」
頭を抱える私に、
麻紀は楽しそうに笑って言った。
「もてる男と付き合う宿命だよ、紗衣。
谷本君なんか悲しいぐらい何もないんだから」
谷本君と聞いて思い出した。
そういえば今日は、麻紀からの相談事のために来てるんだった。
最初のコメントを投稿しよう!