偶然と疑惑

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「それよりさ。片桐さんが気になること言ってたんだよね」 「なんて?」 「戸川君を恨んでたことがあるって」 「あーそれ、 多分だけど知ってるかも」 麻紀が教えてくれた。 「亀岡さんが戸川君に抱きついて泣いてたことがあったらしいよ。 深夜のオフィスで」 「深夜のオフィス…」 意味ありげで、ちょっとショックだ。 「ただ目撃情報によると、 亀岡さんがしがみついてるばかりで、戸川君は腕も回さず棒立ちのままだったって。 戸川君らしいよね、無駄に優しさ振りまかない所が」 「いったいどんな状況なんだか」 「それは分からないけど。 でもそれのことじゃないの? 片桐王子が言ってるのは。 まあ誤解だったって言うなら、 そうなんでしょ」 「余計気になってきた…」 頭を抱える私に、 麻紀は楽しそうに笑って言った。 「もてる男と付き合う宿命だよ、紗衣。 谷本君なんか悲しいぐらい何もないんだから」 谷本君と聞いて思い出した。 そういえば今日は、麻紀からの相談事のために来てるんだった。
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