偶然と疑惑

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食事の後、思いつく用事を済ませてしまうと、トランクから資料を出している戸川君に帰るねと声をかけた。 「えっ、もう? …そういえば明日って月曜か。 そっか、帰るよな」 移動しすぎて曜日の感覚が狂ってしまったらしい。 そんな彼を笑いつつも、 大変なんだなと思う。 「ごめんな。 世話焼かせるばっかりだった」 疲れてるくせに、送るからと強引について来ようとする戸川君を平気だからと説き伏せた。 「…あ。聞くの忘れた」 帰り道、誰か来てたのか、 聞きそびれたことに気付いたけれど。 だって帰り際にはもう、玄関はお風呂場から漂うシャンプーの香りになっていたから。 「ま、いっか…」 戸川君はコソコソ立ち回る人じゃないし、誰か来てたとしても気にするようなことじゃないだろう。 そう考えることにして、 香水の件は頭の隅に押しやり、 三週間ぶりの戸川君の顔を思い浮べながら帰った。
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