不器用な唇～偶然と疑惑

偶然と疑惑

海事の大部屋にいると、男性ばかり経企室と違い、女性の香水の香りが時々ふわりと漂ってきて、昨日の香りの件を思い出させた。

あの香り、どこか記憶にあるなと考えながら、また欧州部の方に視線を戻す。

欧州部の横は管理部で、渡辺さんの姿もあった。
すると、電話を終えた戸川君に渡辺さんが近寄るのが見えた。
渡辺さんが何か言うと、頷く戸川君。

…あんな耳打ちみたいに顔を近付けなくても。

妙に親しげに距離が近い渡辺さんにイラッとする。