偶然と疑惑

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「はは、成瀬さんの怒った顔、初めて見た」 顔を覗き込んだままくすくす笑う片桐さんに小声で言い返した。 「怒ってませんけど、 もう少し離れて下さい。 女子の視線が痛いんですよ」 「僕は彼の視線が痛いけどね。 …あ、今振り向いたら駄目だよ」 「え?」 渡辺さんがさらに接近中とか? 思わず振り向きかけた私の肩を、 片桐さんが軽く引いて止めた。 「へぇ…あの彼がね。面白いね」 「何がですか? 何で振り向いたら駄目なんですか?」 「成瀬さんは気にしなくていいよ。 さ、早く行かないと」 「…散々待たせといて感じ悪い」 なぜか愉快そうに笑う片桐さんに腹を立てながら、それでもやっぱり戸川君達の方を見る勇気もなく、顔を逸らしたまま米州部のミーティングルームに入った。
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