偶然と疑惑

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「指示したご本人も明確なイメージはなかったりするんです。 それを形にしようと、何度も叩かれるのが私達の仕事です。 ほら、前に片桐さんが仰ってた、 何もないところに 何かを見出そうとする努力、です」 たった一つの企画を仕上げるにも、精神をすべて注入するぐらいの集中力が要る。 その堂々巡りの作業は地味で、 モチベーションの維持が難しい。 営業で活躍してきた片桐さんは、成果の見えない状態が続くこの仕事は肌に合わないだろう。 できた人だから決して口には出さないけれど、本当は滅入ってるはずだ。 「今回の仕事、単なるトレンド発信なら外部委託で十分なので、副社長の意図は別だと思うんです」 こんな時はコンビの私が踏張って励ますことができたらと思う。 「商品企画と営業、今は別個に動いてますけど、常に営業の情報を企画にフィードバックする仕組みをつくるという組織改革に持っていくのはどうですか?」 片桐さんに意見を述べている最中に、海事の集団とすれ違った。 その中に戸川君がいたかどうかは 会話に集中していたから分からなかった。
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