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その週の半ば、片桐さんと海事フロアでエレベーターを待っていると、渡辺さんがやってきた。
嫌だな…。
片桐さんは私が身を固くしていることなど気付くはずもなく、横で世間話をして笑っている。
片桐さんの話に集中しようと努めていると、隣にやってきた渡辺さんからふわりと香りが漂った。
この香り……、
「……！」
思わず渡辺さんの方に顔を向けたら、目が合って会釈された。
「成瀬さん、ですよね？」
名前、知ってるくせに白々しい。
社食では睨みつけるような視線を送ってくるのに、今は片桐さんがいるせいか、にこやかに話し掛けてくる。
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