偶然と疑惑

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こんな時、コンプレックスがムクムクと頭をもたげてくる。 過去に何度も恋人を奪われた。 信じてるだけでは駄目だった。 もっと疑えばよかったのかなとも思った。 でも過去の誰も惜しくはない。 戸川君だけは、耐えられない。 そんな存在を持つと人は強くなれるはずなのに、私はかえって弱くなるみたいだ。 わざわざ私に話かけてきた彼女が怖かった。 「成瀬さん、どうしたの?」 気付けば少し先で片桐さんが振り返っていた。 「あ、すみません、行きます」 戸川君は過去の誰とも違う。 そう思うのに、 やっぱり不安で仕方なかった。
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