偶然と疑惑

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「この間、回覧になってた雑誌記事見ました。すごいですね」 「あ、あれは半分会社の広告みたいなものなので…」 作り笑顔にたじたじとなっていると、エレベーターが到着した。 あいにく空のエレベーターで、この三人で乗り込むしかない。 狭い空間でさらにはっきりと感じられる、あの香り。 頭がぐらっと揺れたのか、エレベーターが揺れたのか。 「着いたよ、成瀬さん」 片桐さんに促されて我に返り、渡辺さんに会釈する。 「頑張って下さいね、成瀬さん」 「ありがとう。…あなたも頑張ってね」 いかにも邪気の無さそうな笑顔にやっとのことで余裕の態度を返しながらエレベーターを降りた。
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