偶然と疑惑 #2

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それから年末までは、 ひたすら目の前の仕事を片付けた。 戸川君とはたまに電話で話す程度。 彼は口数が多い方ではないし、 互いに忙しいとわかってるから、 近況報告だけで短めに切り上げていた。 体調は戻っても寂しさは募るばかりで、カレンダーを眺めては、いつ会えるようになるんだろうとため息をつく日々が続いた。 去年のこの時期、 どうやって乗り切ったんだっけ? 崎田さんといた頃も忙しくて会ってなかったはずだけど、こんな寂しさは記憶にない。 それぐらい戸川君は特別な存在だったんだと身に染みた。 去年と同じ状態のはずなのに、本当に好きな人との幸せを一度手にしてしまうと、その喪失感は堪え難かった。
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