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「なんか、
余計に気力も体力も消耗した気がする…」
ご飯を食べる元気もなく、
ぐったりと膝に顔を埋める私に、
戸川君が楽しそうに言い放った。
「お前、ずっと俺に抱きついてたくせに。
あんな大胆に誘ってくると思わなかったな」
「なに言っ…、
離れたら見えちゃうからでしょ!」
「ま、そういうことにしといてやるけど。
だけどお前の声、すご…」
「わーわー、言わないで!」
お箸が落っこちるのも構わず、
戸川君に猛抗議する。
今はリビングで、
二人で用意した適当なご飯をつついている最中だ。
騒ぎが一段落すると、
私はしょぼくれて謝った。
「ごめんね。
…ちゃんと作る余裕なくて」
「別に、飯なんかどうでもいい。
お前がやんなきゃいけない義務ないだろ」
「でもさ…」
私はヘタじゃないと思うけど、
とにかく平日は忙しくて、
凝った料理の腕を磨く余裕がない。
もっと自信をもってふるまえるレパートリーがあればいいんだけど、しみったれた惣菜ばかりだ。
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