偶然と疑惑 #2

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「別に料理上手じゃなくていい」 「私、ヘタってこと?」 「ヘタじゃないけどお前、凝ったことしようとしてよく失敗してるだろ。 隠してても知ってんだぞ」 「…う」 「逆に、料理の腕を振りかざして迫ってくる女は好きじゃない」 「なんで?」 「みえみえだろ。アピールが。 胃袋で釣ろうってのも馬鹿にされてる気分だし」 「えらく屈折して……あいたっ」 苦しいフォローだバカ、と頭を叩かれた。 「とにかく、無理しなくていいからな」 「…うん」 …幸せだ。 戸川君の顔を眺めながら、 自然に顔が綻ぶ。 「あ、再来週、また出張入った。 また予定変更だらけになるけど、 マメに連絡できるか、よく分からないな」 「えー…」 幸せ気分は長くは続かない。 「だから、濃くしとかないと」 ニヤリと笑った戸川君に ずるずると引き寄せられる。 彼の目に浮かぶ欲に、 私も秘かな熱を持つ。
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