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「別に料理上手じゃなくていい」
「私、ヘタってこと?」
「ヘタじゃないけどお前、凝ったことしようとしてよく失敗してるだろ。
隠してても知ってんだぞ」
「…う」
「逆に、料理の腕を振りかざして迫ってくる女は好きじゃない」
「なんで?」
「みえみえだろ。アピールが。
胃袋で釣ろうってのも馬鹿にされてる気分だし」
「えらく屈折して……あいたっ」
苦しいフォローだバカ、と頭を叩かれた。
「とにかく、無理しなくていいからな」
「…うん」
…幸せだ。
戸川君の顔を眺めながら、
自然に顔が綻ぶ。
「あ、再来週、また出張入った。
また予定変更だらけになるけど、
マメに連絡できるか、よく分からないな」
「えー…」
幸せ気分は長くは続かない。
「だから、濃くしとかないと」
ニヤリと笑った戸川君に
ずるずると引き寄せられる。
彼の目に浮かぶ欲に、
私も秘かな熱を持つ。
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