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だけど平日の残業の疲れも溜まっていたから、襲い来る睡魔はどうにもならなかった。
リビングで喋っていたはずが、
気が付くと彼のベッドで。
窓の外はもう暗く、リビングに通じるドアの隙間から灯りが細く漏れている。
「しまった…」
慌てて服の皺をのばしながらリビングのドアに手をかけた時、戸川君の声が聞こえてはっと止まった。
「いいかげんにしろよ。噂だろ」
そのまましばらく静かになった。
…電話で喋ってるの?
「お前、親切で言ってんじゃねぇだろ」
苛ついてる低い声。
なんとなく直感で、
話題は私のことかなと思った。
相手は…渡辺さん?
「…切るぞ」
続いてテーブルの上に何か投げ出す音と、大きな溜息が聞こえた。
今は行きにくいけど勇気を出して、
リビングのドアを開けた。
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