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「…あ。悪い。起こした?」
ソファに寝転んで顔を覆っていた戸川君が慌てたように起き上がった。
「ごめんね、寝ちゃって。
誰かと電話してたの?
聞くつもりはなかったんだけど」
「…ああ」
短く答えただけの戸川君の横に腰掛ける。
その時、テーブルの上の携帯がまた鳴った。
戸川君が舌打ちして電源を切る。
その時ちらりと見えてしまった名前は、やっぱり彼女だった。
「渡辺さん…?」
「ああ…仕事で繋がってるしな」
どこか歯切れの悪い返答に正直不安がない訳じゃない。
だけど、この間から私も考えて、
何も聞かないと決めていた。
前に一度、はっきりと渡辺さんのことは説明してくれたから。
今が適当なのかは分からないけど
それよりも伝えなきゃいけないことがある。
「あの…話があるんだけど。
噂のことで」
私の腰に回した戸川君の腕が、
わずかに強ばった。
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