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「分かってるよ」
一言、そう言った戸川君の目を
真っすぐに見た。
単なる噂だろ、と意味を込めて言ってくれてるんだと分かる。
「見てたら分かるよ。
一生懸命、純粋にやってるのが」
必死で弁明しなくても理解してくれていたことにホッとして、彼の胸にゆっくりもたれた。
「どんな噂が回ってるのか、
私もあまり知らないんだけど、
全部ウソだと思うから」
「うん」
「あの仕事、
正直途中で駄目になる可能性高いの。
海事が絡んでるから、戸川君に失敗を見られるのが恥ずかしくて言えなかった」
「どんな仕事かは
米州部の奴から聞いて知ってる。
片桐さんと紗衣がやって駄目なら
誰がやっても駄目だろ。
皆そう思ってるよ」
「ありがとう…」
戸川君の背中に腕を回して胸に顔を埋めると、穏やかな鼓動が聞こえた。
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