第4話

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         五、マーサーの家     コネティカット州に住んでいる姉の友人マーサの家に初夏の週末、    招待され、おたけは姉とふたりコトコトと電車で一時間半出かけて行っ    た。     マハッタンと違い郊外の緑豊かな小さな街に着いた。    駅にはマーサが四歳と六歳の男の子と一緒に迎えに来ていた。    三人とも色白で目のクルリとした同じような顔をし、良く似ていた。     少し高台になった住宅街の家は百五十坪の敷地に七十坪のブルーの壁に    白い縁取りがしてありアメリカン風二階建ての中流階級の家だ。    何本かの木と広い芝生が目に浸みた。    マッハタンのビルデェングの林を抜ける風とは違い、    冷たいフレッシュな風だった。     夕飯には庭でバーベキュウーをして、    ビールを飲みながらお喋りをした。    私達が日本人と知ってか、六歳の長男は柔道をしていると自慢気に柔道着    を着てみせてくれた。     マーサはIT関係の仕事をしていると、    御主人のサラリーより稼ぎが言いと、    印刷業をしているご主人が嘆いてみせた。    おとなしい人の良さそうな人だと感じた。     姉とマーサはお喋りマシンのように、まくし立てて話をしていた。    おたけははしゃぎ回る子供達とご主人相手に肉を焼く事と    食べる事に専念した。     次の日、姉と近くの林の中に在る高級住宅街に散歩に出かけた。    プール付の広い家と敷地、上流階級の家が建ち並んでいた。    殆どの家にはフェンスが無い。    あっても金網、解放感溢れる。    人が見ようが見まいが、我貫徹せずのようだ。    日本の様にブロク塀に囲まれた小さな家が建ち並ぶ街など何処にもない。    テラスやそこに在る椅子やテーブル、いろんな形のプールやテニスコー    ト、家の作りを見るだけでも楽しい。         二時間程散策した後、二人して溜息をした。    「ブルジョワも沢山いるのね。」とおたけが言うと、    姉は「今に私の絵も売れて、豪邸に住むわよ。    それとも私が死んで価値が出るかも?」と暢気なことを言った。    おたけは「もっと人に解りやすい売れる絵を書いたら?」と心の中で呟や    いた。        
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