唇の距離 #2

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「バカだ…私…」 思い返すほどに情けなくて、 身悶えしそうだった。 戸川君は絶対落ちない、 って聞いてたじゃない。 ちょっと優しくされたからって それを忘れるなんて。 期待して、舞い上がって、 落ち込んで、取り繕って。 大人の恋愛って、 こんなのじゃなくて、 もっとクールなんだろう。 でも私は幾つになっても不様な恋愛ばかりだ。 ……。 考えれば考えるほど自己嫌悪のループに陥っていた私は、ふと顔をあげた。 彼が発した言葉を 頭の中で掻き集める。 “あの時、泣いてた” “ごめんな” あの時って。
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